計算という作業に使用する道具といえば電卓やコンピュータ等が上げられます。これらのが世に出た当初、電卓は電子式卓上計算機、コンピュータは電子計算機と呼ばれていました。
こうした新しい道具に「電子」という言葉が使われていたという事は、それまでは「電子」では無い道具が計算に使われていたという事で、それが「機械式計算機」なのです。
もちろん、当時の庶民の計算道具の筆頭は算盤(そろばん)でしたが、機械や建築の強度計算や、天文学などといった複雑な計算には「機械式計算機」が使用されていました。
日本で「機械式計算機」が大量に使用される様になったのは、関東大震災の復興事業と云われてます。建物や橋の強度計算などに使われたのです。太平洋戦争中は女子学生が動員され、弾道計算という大砲の弾の飛ぶ軌跡の計算にも「機械式計算機」が使用されました。
戦後の経済成長も「機械式計算機」を必要とし、世の中には大量の「機械式計算機」が広まり、1960年代には「機械式計算機」の回転動作を手動からモーターに置き換えた、電動の「機械式計算機」の利用も広まりつつありました。
そのころに半導体を使った電子式卓上計算機が発売されました。発売当初は大きくて重く非常に高価でしたが、半導体の進歩と量産化により、小型化と低価格化が飛躍的に進んで社会に普及。それにともなって1970年に「機械式計算機」は過去の遺物となったのです。
こうした「過去の遺物」の機械式計算機ではありますが、そこには精密機械技術と工業素材の発展の歴史が詰まっており、社会の発展に大きく寄与した「産業文化遺産」である事に間違いありません。
手動・電動加算機
① ②加減算器 ③フルキー手動・記録式加算機 ④電動・記録式加算機
上の写真は代表的な機械の一部です。数多くの機種が多くの年代に渉り出荷され、最終期には加算機構を基に「四則演算」を行う機械も出現しました。
①~③近代科学資料館 ④(株)タイガー 所蔵品
手動・電動四則計算機
①手動計算機 191X ②手動計算機 196X ③電動計算機 195X
金銭登録機(レジスター)・会計機
①機械式金銭登録機 TEC35年史から ②NCR会計機31号 日本NCR提供
金銭登録機(レジスター)はその後急激に電子化され、簡易な「電子レジ」とシステム化した「POSレジ」に進化しました。また、会計機 はリレー(継電器)の使用などありましたが、電子化され「オフコン」と呼ばれるようになりました。
機械式計算機の歴史
機械式計算機の歴史につきましては、ウィキペディアの機械式計算機の頁や、機械式計算機の会の会報2号から5号(会員限定、要パスワード)をご覧ください。ただし、ウィキペディアにはパテント・ヤズ・アリスモメーターと虎印(タイガー)計算器の間の時期に存在した、IDEAL計算機についての記述がありません。