恒温槽(温泉卵製造装置)

電気ポットをッハックして恒温槽化

タイトルは『恒温槽』ですが、写真をご覧の通り電気ポットです。これは勤務先で使用していた物ですが、電源が入らなくなって処分する事になった物。

これを分解してみたところ、原因が接触不良だったので修理して使用できる様になりましたが、会社では新しい製品を購入したので不要です。我が家では電気ケトルを使っていますので、電気ポットは要りません。

・・・で、何かに使えないかと考えて思いついたのが『温泉たまご』作り。

温泉たまごは『卵黄は約70℃で固まるのに対し、卵白は約80℃で固まる』性質を利用して、卵を70℃程度のお湯に浸けておく事で作る、黄身は固まり、白身は固まっていない状態のゆで卵ですね。

家庭では発泡スチロール製の保温できる≒カップ麺の容器等を用いて作りますが、卵の温度や外気温といった一定でない条件のため、出来上がりに差が生じてしまう事があります。

卵の温度や外気温が一定でなくても、失敗なく温泉たまごを作る方法として考えられるのは、卵の温度や外気温に影響されにくい様に、大量のお湯を使用する事です。お湯の量が多ければ多いほど、外的要因に影響される割合が下がるというワケです。

しかしこれではエネルギーの無駄使いになってしまいます。そこで電気ポットを改造し、70℃程度で保温できる様にすれば、少ない量のお湯でも失敗の無い温泉たまご作りができると思いつきました。

当初の考えは電気ポットのマイコンを騙す事でした。温度センサーの配線に抵抗を入れ、お湯が70℃になった時、電気ポットのマイコンに沸騰した時の信号が送られる様にすれば良いと考えました。

しかしこの案は失敗でした。電気ポットの温度センサーは『温度が上がると抵抗が上がる』ので、抵抗を追加すれば実際の温度よりも高いという信号をマイコンに送れると思っていたのですが、実際の温度センサーは『温度が上がると抵抗が下がる』物だったのです。

温度センサーに使われているのはサーミスタという半導体なのですが、サーミスタには『温度が上がると抵抗値が下がるNTCサーミスタ』と『ある温度まで抵抗値が一定で、ある温度を境に急激に抵抗値が高くなるPTCサーミスタ』の2種類があり、電気ポットの様な温度の制御に使われているのは『温度が上がると抵抗値が下がるNTCサーミスタ』の方だったのです。

次にサーミスタを別のレンジの物に交換する事を考えましたが、電気ポットのサーミスタは交換できる構造になっていないためこれも断念。センサーに電流を追加するのは・・・わたしには無理。

世間ではArduino(アルデュイーノ)というホビー用のマイコンを使って、電気ポットを制御する方もいらしゃいますが、回路の制作やプログラミングを行なわなければならず、かなり面倒な作業になる事が予想されます。

自由に温度を設定できる制御装置を探していますと、業務用の高価な物ばかりだったのですが、いろいろと探していましたら、安価な温度制御装置が見つかったのです。

デジタル温度コントローラ(サーモスタット)
デジタル温度コントローラ(サーモスタット)

ご覧のとおり送料込みで1,500円。もちろん中国製ですが、加熱にも冷却にも対応していますし、設定した温度から何℃ズレたら再び加熱するといった温度幅(ヒステリシス)も調整できます。中国の通販サイトでは10ドルほど(送料込み)で売られていました。もしかしたら、これの中身は先に述べたArduinoのコピー品に、10アンペアほどの容量のリレーを足した物なのかもしれません。商品説明に熱電対とありますがたぶんサーミスタです。

工作は簡単。100円ショップで購入した80cmほどの延長コードを切り、サーモスタットに配線するだけです。これを電気ポットとコンセントの間に入れれば温度コントローラーに、外せば普通の電気ポットとして使用できます。

これを68℃になったら電源オフ、設定より0.5℃下がったら電源オンに設定。これで温泉たまご製造装置の出来上がりです。実際にはヒーターの熱が湯を通ってセンサーに届くのにタイムラグ(オーバーシュート)がありますので、ポットの中の水温は67℃から70℃くらいの間で推移します。

昨今は低温調理法とか真空調理法という、肉や魚などタンパク質を多く含む食材を、凝固温度より低い温度で長時間(1時間程度)加熱するという調理方法が普及しはじめており、これはそうした調理にも対応します。真空調理法というのは、食材をビニール袋に入れて空気を抜くため、真空という名前になっていますが、行っているのは低温調理法を同じ事です。

Anova Precision Cooker
Anova Precision Cooker

こちらは新しモノ好きな方の間で流行っている、Anova Precision Cookerという低温調理用の機器で、ヒーターと水を撹拌させるスクリューが内蔵されています。この機器は普通のナベの使用が前提のため、ナベから熱が逃げやすいですし、蓋もできませんので、熱効率は良くないと思われます。

アメリカの電気代は日本の半額ほどですので、車の燃費は気にしても、電気代は気にしないのでしょう。新しいだけあってスマホと連動できたりと格好いいですが価格は20,625円。どなたか電気ポット型と比較してみていただけたらと思います。

PS:上に書いたAnova Precision Cookerの会社が、スウェーデンの家電大手、Electrolux社に2億5000万ドルで買収されることになったそうです。(TechCrunch Japanより)

しかし、ヨーロッパ各国の電気代は、アメリカより日本に近いですから、普及して行く過程で、保温も考慮した熱効率の良い、ポットやナベの様な形状に変化して行くのはないでしょうか。また、こうした機能は電気ポットや炊飯器に追加する事も簡単でしょうから、象印やタイガーが参入しても良い様に思うのですが・・・


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